磯野家相続 第2パターン――土地の名義がお祖父ちゃんだった!
行政書士・土地家屋調査士の佐藤です。
「相続登記が義務化されました」
そう聞いても、
「うちはちゃんと家も土地もあるし、関係ないでしょう」
と思っている方もいるかもしれません。
しかし、ここで一度確認しておきたいものがあります。
その土地、本当に今の所有者の名義になっていますか?
今回は、国民的アニメ『サザエさん』の磯野家を題材に、少し怖い想定をしてみます。
磯野家の土地を調べてみたら……
磯野家には、波平さん、フネさん、カツオ、ワカメ、そして猫のタマが暮らしています。
建物については、仮に波平さん名義だったとしましょう。
ところが土地の登記事項証明書を確認してみると――
所有者 磯野波平……ではない。
そこに書かれていたのは、
波平さんのお祖父ちゃん。
「えっ?」
となるところですが、古くからその家に住み続けている家庭では、こうしたケースが絶対にないとは言い切れません。
代替わりしても相続登記をせず、
「ずっとウチの土地だから」
と、そのままになっている土地です。
問題は「お祖父ちゃんが亡くなった時」まで遡る
ここから話が一気に複雑になります。
土地の登記名義人であるお祖父ちゃんが亡くなった時点で、相続は発生しています。
ところが、そのとき相続登記をしなかった。
その後、お祖父ちゃんの子どもが亡くなり、その子どもの相続人にも相続が発生し、さらにその次の世代でも相続が発生していたら……。
つまり、
相続人の相続人、そのまた相続人
を調べなければならない可能性が出てきます。
「波平さんの土地だと思っていたのに、知らない親戚まで関係してきた」
そんな事態もあり得るわけです。
放置された相続は「枝分かれ」していく
相続登記をしないまま世代交代が続くと、相続関係は木の枝のように広がっていきます。
最初は数人だった相続人が、
子どもへ。
孫へ。
さらにひ孫へ。
その間に亡くなった人がいれば、その人についても相続が発生します。
結果として、
「そもそも現在の相続人は何人いるのか?」
というところから調査しなければならなくなる場合があります。
戸籍を集め、相続関係を確認し、必要に応じて現在の住所を調べる。
ようやく相続人が判明しても、
「そんな土地があるなんて初めて聞いた」
という人が出てくるかもしれません。
そして相続登記は「義務」になった
2024年4月1日から相続登記は義務化されました。
原則として、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。
しかも重要なのは、
2024年4月1日より前に発生した相続も対象になる
ということです。
昔の相続だから、そのままでいい。
という制度ではありません。
正当な理由なく義務に違反した場合には、10万円以下の過料が科される可能性もあります。
「相続人が多すぎて間に合わない!」場合は?
何代にもわたって相続登記がされていないと、すぐに遺産分割協議をまとめることが難しい場合があります。
そこで設けられているのが相続人申告登記です。
これは、登記簿上の所有者について相続が発生したことと、自分がその相続人であることを申し出る制度です。
期限内に申し出ることで、申出をした相続人について相続登記の申請義務を履行したものと扱われます。
ただし、これは土地の所有権を最終的に誰が取得したのかを確定して登記する通常の相続登記とは別の制度です。
不動産を売却したり、抵当権を設定したりする場合には、最終的には通常の相続登記が必要になります。
つまり、
「とりあえず申告したから、全部解決!」
という制度ではありません。
磯野家の場合、波平さんだけの問題ではない
もし土地の名義がお祖父ちゃんのままだった場合、
「波平さんが手続すれば終わり」
とは限りません。
お祖父ちゃんが亡くなった時点で誰が相続人だったのか。
その相続人のうち、すでに亡くなった人はいないか。
その人には配偶者や子どもはいなかったか。
さらに次の相続は発生していないか。
一つずつ確認していく必要があります。
登記簿に書かれた一人の名前から、巨大な家系図が始まる可能性があるのです。
「固定資産税を払っているから大丈夫」ではありません
ここも勘違いしやすいところです。
固定資産税を毎年払っていることと、不動産登記簿上の所有者が現在の所有者になっていることは別の問題です。
「毎年税金の通知が来ているから、当然、自分の名義だろう」
と思い込まず、一度登記を確認してみることが大切です。
特に、
- 祖父母や曽祖父母の代から住んでいる土地
- 昔から親族間で引き継いできた土地
- 田畑や山林
- 遠方にある先祖代々の土地
- 相続した記憶はあるものの登記した記憶がない不動産
などは、一度確認しておいた方がよいでしょう。
相続登記の義務化で本当に困るのは「昔の宿題」
相続登記の義務化というと、
「これから相続が発生した人の話」
と思われがちです。
しかし、本当に確認しておきたいのは、
過去の相続で登記を済ませていない不動産が残っていないか
ということです。
磯野家でも、
「この土地、ずっと磯野家のものだから」
と思っていたら、登記簿には波平さんのお祖父ちゃんの名前が残っていた。
そんなところから、何十年分もの「相続の宿題」が突然見つかるかもしれません。
相続登記の義務化をきっかけに、一度ご自宅や実家の土地・建物の登記を確認してみてはいかがでしょうか。
さて、あなたの家の土地。
登記簿には、誰の名前が書いてありますか?

