土地所有権 仁義なき闘い?――測量を阻んだ不法占拠者、ちゃおチュールで和解成立

土地の測量という仕事では、ときに思わぬトラブルに遭遇する。

境界について隣接地の所有者と意見が食い違ったり、昔からある塀や物置が境界付近に建っていたり。

「ここからここまでが自分の土地だ」

そんな主張がぶつかることもある。

ところが、ある日の測量で我々の前に立ちはだかったのは、人間ではなかった。

測量しようとしたら、物置小屋から威嚇された

その日、測量しようとしていた土地には古い物置小屋が建っていた。

測量のため、その物置小屋の近くへ行こうとしたところ――

「シャーッ!」

何かいる。

物置小屋に住み着いていた野良猫だった。

しかも、かなりご立腹である。

こちらが近づこうとすると、再び威嚇してくる。

どうやら子猫でもいたのだろうか。

猫にしてみれば、突然知らない人間が測量機器を持って自分の縄張りへ入ってきたのだから、警戒するのも当然だったのかもしれない。

しかし、こちらにも仕事がある。

測らなければならない。

困った。

土地の境界なら測れるが、猫との境界交渉は専門外である。

最強の交渉材料がポケットに入っていた

さて、どうしたものか。

そこで、ふと思い出した。

なぜか、その日の私のポケットには愛猫用の「ちゃおチュール」が一本入っていた。

普段なら測量の現場に必要になるような物ではない。

しかし、この日に限っては、どんな測量機器よりも役に立つ可能性が出てきた。

試しにチュールを取り出して、猫に差し出してみる。

すると――

先ほどまでの険悪な空気が、少しずつ変わっていった。

交渉成立。

土地の所有権も、境界確認書も、印鑑も必要なかった。

必要だったのは、ちゃおチュール一本だったのである。

測量に異議を唱えるのは、人間だけではなかった

もちろん、これは笑い話である。

猫が土地の所有権を主張していたわけでもなければ、本当に不法占拠していたわけでもない。

猫からすれば、物置小屋は安心して過ごせる自分の縄張りだったのだろう。

人間には人間の土地の境界があり、猫には猫の縄張りがある。

たまたま、その二つが重なってしまっただけの話である。

しかし実際の土地の測量では、現場へ行って初めて分かることも少なくない。

古い物置や塀、樹木などが境界付近に存在していたり、長い年月の間に現況と資料だけでは判断しにくくなっていたりすることもある。

図面だけを見ていては分からないものが、現場にはある。

そして、ごくまれに――

猫もいる。

仁義なき闘い、その結末

あの日、物置小屋をめぐって勃発した「土地所有権 仁義なき闘い」。

こちらは測量をしたい。

向こうは縄張りを守りたい。

一歩も譲らない緊迫した交渉になるかと思われたが、意外なほど平和的な解決となった。

勝者も敗者もいない。

強いて言うなら、この日のMVPは測量機器でも図面でもなかった。

ちゃおチュールである。

土地の測量では、ときに思わぬ相手との調整が必要になる。

そして、測量にいちゃもんをつけるのは、何も人間だけではないらしい。

もっとも、猫との境界紛争なら話は早い。

人間同士の土地問題も、ちゃおチュール一本で解決できればいいのだが。