ウルトラマンが街を壊したら、誰が直すのか?

このブログでは、土地・測量・登記といった専門的な話題を中心に扱っていますが、
ときには日常の出来事をきっかけに「士業ならではの視点」を交えたコラムも書いています。
今回は、家族で特撮を観ていてふと頭をよぎった、ちょっとユーモラスで、でも実はリアルな“後始末”の話です。

怪獣退治のあとに、本当の戦いが始まる

ウルトラマンと怪獣のバトルは痛快です。
しかし、現実のまちづくり目線で見ると、戦いの後に待っているのは大規模な復旧工事。
ビルは倒れ、道路は割れ、橋は崩れ、河川や護岸も損壊──まさに「測り直しと造り直し」のオンパレードです。

測量士の悪夢:境界と地積はどうなる?

  • 境界杭の喪失:爆風や倒壊で杭が消失・変位。復元測量・筆界確認が必要。
  • 筆界の不明確化:地形が変わり、既存の地積測量図と現況が一致しない。
  • 公共物の線形修正:道路・河川の付替えで境界線が再定義される可能性。
  • 地籍調査の遅延・やり直し:市街地の地籍整備に大幅な遅延・再測が発生。

結果として、地積測量は広範囲でやり直し。登記情報・各種台帳も連動して更新が必要になります。

誰が費用を負担するのか?

復旧費用は一体誰が支払うのか──現実に置き換えると、ここが最もシビアです。

  • :広域災害や基幹インフラの復旧は原則として国費投入の対象。
  • 都道府県・市区町村:道路、河川、公園などの管理者負担・補助金スキームの活用。
  • 個人・法人:民有地・民間建物の復旧は所有者負担が基本(保険適用の有無が鍵)。

現実的には、国・自治体・民間の複合スキームとなり、立法措置や特別交付税・補助事業で支える形が想定されます。

保険は効くのか?「怪獣保険」問題

  • 火災保険・地震保険:約款上の「戦争・暴動」等が免責であるように、架空の巨大生物・超常現象は対象外になりがち。
  • 自治体の見舞金・支援制度:保険が効かない損害に対して一定の生活再建支援が行われる可能性。
  • 新種のリスク商品:もし現実に“常習的な巨大破壊要因”が生じれば、専用保険や基金創設の議論も。

つまり、いわゆる「怪獣保険」がない限り、既存保険で全額カバーは難しいのが実情です。

復旧のプロセス:現実的ロードマップ

  1. 被害状況の把握:航空写真・ドローン測量・3Dスキャンで広域に現況把握。
  2. 仮復旧・安全確保:応急的な通行確保、二次災害防止の仮設対応。
  3. 筆界確認・復元測量:関係地権者立会いのもと、筆界の確認・杭の復元。
  4. 設計・本復旧:道路・橋梁・河川の再設計、耐災害性を織り込んだ再整備。
  5. 登記・台帳更新:地積・地目・境界の変更があれば、登記や各種台帳の更新。

このプロセスには、測量士・建設コンサル・設計者・施工者・行政が一体となって取り組む必要があります。

小さな結論:ヒーローのあとに、測る人たちがいる

ウルトラマンは怪獣を倒すヒーローです。
ですが、戦いが終わった後こそ、本当の「まちの再生」が始まる──境界を確かめ、地積を測り、暮らしを取り戻す作業は地味でも欠かせません。
特撮を観ながら「境界杭は大丈夫か?」と考えてしまうのは、職業病かもしれませんが、それが私たちの仕事です。